様々な公式情報を発信しているWarhammer Communityから、今回は機動装甲服のさまざまな型式についてご紹介。
機動装甲服の系譜
シタデルミニチュアの中でもスペースマリーンはすぐにそれと分かる外見をしている。その理由はなんといっても彼らが身に着けている機動装甲服(パワーアーマー)の特徴的な見た目だろう。今回は、彼らスペースマリーンを象徴するこの装甲服のデザインと進化について深く掘り下げてみよう。
セラマイトを纏いし者
セラマイトは結合型セラミック装甲の一種であり、想像を絶するほどの耐久性と軽量性を兼ね備えている。金属とは異なりセラマイトは衝撃によってへこんだり破断することはなく、弾丸によって貫通するためには並外れた威力と口径が必要となる。セラマイトの修復は元の装甲に新たなセラマイトの層を重ねることで行われる。セラマイトは断熱性にも比較的優れているため、熱力兵器や高エネルギー兵器への防護としても理想的である。
30年以上にわたり、スペースマリーンの機動装甲服は、ウォーハンマー40,000の背景設定と実際のミニチュアデザインの両面において様々な発展を遂げてきた。その結果として、機動装甲服には八つの特徴的な型式が生まれ、それぞれが独自の歴史と設計思想を有している。今回はテラの統一期における誕生から、〈ホルスの大逆〉期における急速な進化、そして41千年紀の現在に至るまでの、スペースマリーンの装甲服の物語をお届けしよう。
今回解説するのは作中の歴史だけではない。30年以上に及ぶ歴史の中で機動装甲服のデザインがどのように進化していったか、そして各デザインの誕生にまつわる洞察についても解説するつもりだ。ウォーハンマー40,000の世界において、各型式はそれぞれ順番通りに開発されてきたことになっているが、興味深いことに、ミニチュアデザインとしての各型式は順番通りに生み出されたわけではない。デザイナーはしばしば進化のミッシングを埋めるために「旧型を新たに生み出す」ということをしてきたのだ。そしてこうして生み出された新デザインは、〈帝国〉の歴史のそれぞれ異なる時期を反映したものとなっている。それでは機動装甲服の歴史を紐解いていこう……。
Mk. Ⅰ “雷電(サンダー)”型
“雷電”型はテラ統一戦争において、皇帝に仕えるプロトタイプ・スペースマリーンによって用いられた型式である。完全に密閉されてはおらず、したがって気密性も有さない本型式は、厳密な意味での機動装甲服とはみなされていないが、以降の設計へとつながる第一歩であると言える。胴体に装甲とエネルギー動力をもたらす本型式は、着用者の上半身に莫大な膂力をもたらし、敵を組み伏せ、打ち破ることを可能とした。装甲服を稼働させるために必要な動力はバックパックから供給されており、この革新的な技術は以降のあらゆる型式にも用いられている。型式名である“雷電”は、装甲の胸甲部分にあしらわれている稲妻の文様から取られている。
豆知識
- サンダーウォリアーが背景設定において言及されることは稀であるが、サンダーウォリアーの一員であるバドゥ・ダカール(もともとはアリク・タラニスとして知られていた)が『ホルス・ヘレシー』シリーズの小説『The Outcast Dead』に登場する。
- “雷電”型装甲服がミニチュアとして造形されたのは最後期のことであり、そのミニチュアはゲームの駒としてではなく、各型式を網羅するコレクター用アイテムとして作られたものだ。
Mk. Ⅱ “征戦(クルセイド)”型
太陽系の征服を終えた後、皇帝は指揮下のスペースマリーン諸兵団に、真の機動装甲服として最初の型式である“征戦”型を配備した。この型式は外部環境から密閉されているため、着用者は過酷極まりない戦闘環境や、果ては宇宙空間においても戦闘を行うことが可能である。胴体と脚部には輪を重ねたような関節部が設けられており、これによってスペースマリーンは並外れた機動力を手に入れた。さらにより効率的なパワーシステムによりオーバーヒートの危険も抑えられている。最も戦闘効率に優れた機動装甲服との呼び声も高い本型式だが、整備の困難さゆえ41千年紀においては主力装甲服の地位から脱落している。
豆知識
- Mk.Ⅱのヘルメットはもともと喉当てと一体化しており、着用者の頭に連動して動かすことはできなかった。フォージワールドがMk.Ⅱ装甲服のセットをリリースする際、よりモデリングの幅を広げるためにこのヘルメットは再設計されることとなった。
- このヘルメットは本型式の中で最初にデザインされた部分であり、初期のコンセプトスケッチにも登場している。そして残りの部分はヘルメットに合わせる形でデザインされたのだ。
Mk. Ⅲ “鋼鉄(アイアン)”型
“鋼鉄”型は大征戦のさなかに開発された型式である。“鋼鉄”型は“征戦”型を置き換えるのではなく、移乗戦闘や閉所戦闘といった至近距離での戦いに用いる目的で設計された。“征戦”型を改造したような見た目の“鋼鉄”型は、すね、前腕、腿、胸、鼠径部に追加装甲が設けられており、より大型の肩甲と傾斜のついたヘルメットによって正面からの弾丸を弾きやすくなっている。前面装甲が重厚になった代償として、背面には追加の装甲が一切設けられておらず、それゆえこの型式は閉所での戦いや正面攻勢には理想的であるものの、一般的な戦闘任務には不向きである。現在この型式は主に式典用として用いられている。
豆知識
- ウルトラマリーン戦団の戦車長である軍曹クロヌスはMk.Ⅲ装甲服を身に着けている。
- Mk.Ⅲのヘルメットは中世のガマ口兜をおおむねベースにしているが、より工業的な印象が加えられている。このヘルメットのデザインは20年後にグレイナイトの身につけている機動装甲服のヘルメットをデザインする上での出発点になった。
MK. Ⅳ “頂点(マキシムス)”型
大征戦が銀河全域に広がるにしたがい、皇帝に仕える諸兵団には戦いで損傷し、失われた装甲服を絶え間なく補給し続ける必要が生じた。Mk.ⅡおよびMk.Ⅲ装甲服はその整備性の悪さで知られていたため、それらを置き換えるものとしてMk.Ⅳ装甲服が生み出されのだ。より軽量で効率性に優れ、以前の型式よりも出力に優れた“頂点”型には、大征戦のさなかに再征服された諸惑星から得られた新技術の数々が用いられている。この装甲服は胸甲の外側に装甲化されたパワーケーブルを備えた最初の型式であり、神経伝達テクノロジーの革新によって初めて着用者の頭に連動してヘルメットが動くようになった。
豆知識
- スペースマリーンの着用するバックパックはもともとジェットパックとしてデザインされていた。1988年のウォーハンマー40,000用サプリメント書籍『Chapter Approved』に登場するアートワークでも、彼らがジェットパックとしてこれを使用する姿が描かれている。バックパックの両側についている円形のノズルは、現在の設定では無重力下での姿勢安定用ジェット噴射装置として扱われている。
Mk. Ⅴ “大逆(ヘレシー)”型
〈ホルスの大逆〉によって同胞同士が刃を交えるようになると、機動装甲服の損傷と損失はますます著しいものとなった。Mk.Ⅳの生産がまだ軌道に乗っていなかったため、多くの兵団は使用可能な部品をつなぎ合わせることで装甲服を調達しなければならなくなった。その結果として生まれたのがMk.Ⅴ装甲服である。この型式はMk.Ⅳよりも旧式でかさばるケーブルを有しており、さらにこれらは装甲の外側に配する必要があった。これは“大逆”型の深刻で不可避な構造的欠陥である。さらに肩甲とすね当てには追加の装甲パネルが分子結合鋲で打ち付けられている。こうした措置による追加重量はかなりのものであり、結果としてこの型式は動きにくく、オーバーヒートの危険性も高かった。
豆知識
- 旧式の装甲服をデザインするというのはかなりトリッキーな試みだ。Mk.ⅤはMk.ⅥやⅦよりも古く、原始的に見える必要があったが、しかし設定的にはより技術が進んだ時代のものとして扱われる必要もあった。“大逆”型は古いデザインと新しいデザインを融合させるという最も困難な試みの成果なのだ。
- Mk.Ⅴのブルドッグのようなヘルメット形状は、滅殺装甲服(ターミネイター・アーマー)を元にしている。
Mk. Ⅵ “大鴉(コルヴス)”型
〈ホルスの大逆〉によりMk.Ⅳの生産が伸び悩んだため、主力装甲服としての新型式が開発されることとなった。そうして生まれたのがMk.Ⅵ“大鴉”型である。レイヴンガード兵団総主長にちなんで名付けられたこの型式は、史上初めての二重回路を搭載しており、胴体外部のパワーケーブルは装甲内部のフェイルセーフ回路によってバックアップされている。それ以外のケーブルは新型のより重厚な脚甲を含むセラマイト装甲の内側に隠されている。〈ホルスの大逆〉期、主に忠誠派兵団に配備されたMk.Ⅵ機動装甲服は、一万年を経た今もなお多くの戦団によって用いられている。
豆知識
- ウォーハンマー40,000用に最初にリリースされたプラスチック・キット(現在ではRTB01として知られている)はMk.Ⅵ装甲服を身に着けている。
- RTB01は当初最初のインペリアル・スペースマリーンと同様にブーツ型の脚部を持つものとされていたが、1980年代後半の射出成形技術でこれを実現することは不可能であった。代わりにRTB01は広がったすね当てを持つように再デザインされ、この脚部はそれ以来スペースマリーンの機動装甲服の代名詞となっている。
Mk. Ⅶ “大帝(インペレイター)”型
“大帝(インペレイター)”型、“大鷲(イーグル)”型、あるいは”双頭鷲(アクィラ)”型とも呼ばれるMk.Ⅶ機動装甲服は、四十一千年紀のスペースマリーンが最も広範に用いている型式である。この型式は分厚い胸甲を有しており、これは(Mk.Ⅵ唯一の弱点である)胸部ケーブルを保護するためのものである。胸甲には皇帝への忠誠を示す双頭鷲があしらわれている。獅子鼻のヘルメットはMk.Ⅳへの先祖返りとも言えるデザインだが、より小型になり、戦闘中の着用も容易となった。Mk.Ⅶを何よりも特徴づけているのは、多くの旧型装甲服(特にMk.Ⅳ)の部品と互換性があることであり、これによって必要な修理をより容易に行う事が可能となっている。
豆知識
- Mk.Ⅶのヘルメットを特徴づける口元の格子は、スペースマリーンをより攻撃的に見せたいというデザイナーの考えによって生まれた。頭頂部の突き出しもこの効果をより強調するためのものだ。『The Rogue Trader』のルールブックにはなんと、Mk.Ⅵ装甲服の鼻を切り落とすコンバージョンのやり方が紹介されており、これこそがMk.Ⅶ装甲服のデザインへの第一歩であったとみなされている。
Mk. Ⅷ“遍歴(エラント)”型
“遍歴”型装甲服は〈ホルスの大逆〉の後に考案された型式である。最新型であるにもかかわらず、“遍歴”型が41千年紀の銀河で見られることは稀である。一見すると“遍歴”型はMkⅦ装甲服によく似ているが、胴体のケーブルは全て連結式の装甲板によって隠されている。関節部を守るための追加装甲が腰に設けられており、脚甲の足首部分はより可動部位が広がっている。最大の特徴はせり上がった喉当てであり、これによって胸甲の傾斜によって弾丸が入り込むことがあった首部分を守っている。
豆知識
- Mk.Ⅷは背景上もミニチュアデザイン上も、Mk.Ⅶの改良型として生み出された。この型式が実際にデザインされたのは全型式の中で三番目であったが、ミニチュアとして登場したのは最後であった。
- “遍歴”型は何千年にもわたって用いられているにもかかわらず、41千年紀の銀河で見られることはほとんどない。一体なぜだろうか……?
じゃあ大逆者の装甲服は?
Mk.Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴの機動装甲服のデザインは、実際のところケイオス・スペースマリーンのために1990年に作られたものだ。これは41千年紀の銀河において忠誠派スペースマリーンがより新しい型式の装甲服を着用しているのに対し、〈ホルスの大逆〉の叛逆者たちは旧式の装甲服を使い続けることを余儀なくされていることを表している。ローテクなMk.Ⅴの最初のコンセプトアートはコーン・バーザーカーのものであり、一方でサウザンド・サンはより先進的なMk.Ⅳを身に着けている。プレーグマリーンは過酷な正面攻撃を重んじる兵団の特質を反映するため、重装甲のMk.Ⅲ装甲服を身につけた形でデザインされた。
豆知識
- Mk.Ⅶが装甲服のデザインとして支配的になった1990年代、装甲服の胸部に双頭鷲が描かれたミニチュアは少なかった。当時のスペースマリーン・ミニチュアのほとんどには翼の生えた髑髏や宝石があしらわれていたのだ。双頭鷲が一般的に用いられるようになったのは、完全プラスチックのタクティカル・スカッドがリリースされた1997年からだ。翼の生えた髑髏は今も残されているが、伝説によれば、スペースマリーンの胸部を飾っていた宝石はすべてエルダーに盗まれてしまったのだとか。
コメント
スタークラフトのスペースマリーンやフォールアウトのアーマーもこれが元ネタかな?
秀逸でカッコイイです